アップル初のスマートディスプレイ「HomeView」は、まるで巨大なApple Watch

アップル初のスマートディスプレイ「HomeView」が登場した。スマートホーム機器を操作できるほか、ユーザーを識別し、一人ひとりに合わせてアプリや個人のメッセージを表示できる。成功の鍵を握るのはSiri AIの実力だ。
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Photograph: Julian Chokkattu

今年はアップルにとって、初めての出来事が目白押しだ。新たに「MacBook Neo」を発売し、9月には初の折り畳み式iPhoneを発表した。15年ぶりに最高経営責任者(CEO)が交代した。そして今回、アップル初のスマートディスプレイ「Apple HomeView」が登場したのである。

10年ほど前から音声アシスタントが家庭に普及し始めて以来、グーグルやアマゾンなどの競合企業は、ディスプレイを搭載したスマートスピーカーを数多く提供してきた。一方、アップルのスマートホーム向けの製品や機能は、「HomePod」シリーズを中心に比較的小規模に展開するに留まっている。数年前にはiPadをホームハブとして使える機能さえ廃止した。これにより、アップルのスマートホーム機能を利用するにはApple TVかHomePodを購入しなければならなくなった。アップルがスマートホーム市場であまり成功を収めてこれなかった理由には、こうしたことが関係しているのかもしれない。

そこでアップルは10月13日(現地時間)にニューヨークで開催したイベントで、ほかの複数のスマートホーム向け新製品とともに、7インチのスマートディスプレイを発表した。遅れをとっているスマートホーム事業で巻き返しを図るための施策の一環である。HomeViewの価格は299ドル(約4万5,000円)で、スピーカーを備えた台座付きモデルと壁掛けモデルの2種類が用意されている。どちらも価格は同じだ。すでに予約受付が始まっており、11月13日に発売される(ただし、日本での発売については未発表)。

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Courtesy of Apple

巨大なApple Watch

Apple HomeViewが実際に動く様子を見て最初に思ったのは、巨大化したApple Watchのような製品だということだ。7インチの正方形の画面には、Apple Watchと同じように、スワイプして切り替えられる複数の「文字盤」が用意されている。文字盤の色をカスタマイズしたり、さまざまなコンプリケーション(追加情報を表示する機能)を配置したりして、ひと目で確認できる情報を増やすことが可能だ。

文字盤には時計のほか、友人や家族、ペットのお気に入りの写真(共有アルバムも利用可能)、天気予報、さらにはスヌーピーのアニメーションなども表示できる。上にスワイプするとホーム画面が現れる。こちらはiPhoneやiPadに近いデザインで、アプリとウィジェットが整然と並んでいた。ただし、HomeViewで動作するソフトウェアはiOSでもiPadOSでもない。「HomeView」という、そのままの名前が付いた専用ソフトウェアだ。

また、HomeViewにはアプリストアがない。その代わり、アップルは「FaceTime」「メッセージ」「Safari」などのアプリを用意している。Spotifyなど一部のサードパーティー製メディアアプリも利用可能だ。また、開発者は既存のCarPlay向けアプリをHomeViewでも利用できるように変更できる。iPhoneにインストール済みの対応アプリのなかには、HomeViewの初期設定後に自動的に利用できるようになるものもある。

YouTube、Netflix、Disney+などの動画配信アプリは用意されていない。ただし、こうしたアプリの提供元がCarPlay向けのアプリを提供すれば、HomeViewでも利用できるようになる。現時点で動画を視聴するにはSafariを使う必要がある。

HomeViewを最大限に活用するには、「Apple Intelligence」に対応したiPhone(iPhone 15 Pro以降)が必要だ。iPadをHomeViewの初期設定に利用することはできない。アップルによると、古いiPhoneでも初期設定は可能で、一般的な知識に基づく質問への回答など、Siri AIの一部の高度な機能は利用できるという。ただし、アプリを使ったより高度な操作や、ユーザー個人の端末の利用状況に応じた指示への対応には、Apple Intelligenceに対応したiPhoneが必要となる。

アルミニウム製の本体にはアップルの独自チップ「A18」が搭載されており、カラーはシルバー、スターライト、ローズピンク、スペースグレイの4色から選べる(編み込み式のケーブルも本体に合わせた配色になっている)。標準モデルにはスピーカーを搭載した台座があり、画面の角度を手動で上下に調整できる。

HomeViewには壁掛けモデルもあり、こちらには3種類の専用取り付け器具が用意されている。ひとつは自分で簡単に設置できるタイプで、コンセントにつなぐ電源ケーブルが備わっている。残る2種類は専門業者による設置を想定しており、電源に直接配線するタイプと、イーサネットケーブル経由で電力を供給する「Power over Ethernet(PoE)」に対応したタイプがある。

厳密に言えば、メインスピーカーとなる2基のフルレンジドライバーは、ディスプレイ部分に搭載されている。とはいえ、低音強化のため、標準モデルの台座にも下向きに配置されたウーファーと、振動を打ち消し合う構造のパッシブラジエーターが2基搭載されている。この端末で音を試聴できた時間はごくわずかだったが、音質はかなりよく、広い部屋にも十分に音が響き渡っていた。壁掛けモデルにはそこまでの迫力はないものの、アップルによると壁に設置した状態に合わせて音響を調整しているという。

使う人に合わせて変わる画面

7インチのLiquid Retinaディスプレイには、室内の照明に合わせて画面の色温度を調整する「True Tone」など、おなじみの機能が搭載されている。また、環境光センサーによって画面の輝度を500ニトから0.3ニトまで下げられる。これはアップルがこれまで開発したディスプレイのなかで最も低い輝度だ。HomeViewをベッドサイドテーブルに置く場合には役立つだろう。

ただし、それはカメラを搭載したディスプレイを寝室に置くことに抵抗がなければの話だ。前面には1,200万画素の「センターフレーム」機能(フレーム内の人物に合わせてズームやフレームの向きを自動で調整する機能)対応カメラと4つのマイクが搭載されているが、これらはFaceTime通話だけに使われるわけではない。カメラは顔認識にも対応しており、画面を見ている人物に合わせて表示を切り替えるのにも利用されているのだ。アップルによると、こうしたデータはすべてデバイス内で処理され、外部には送信されないという。

「消費者が求めるプライバシーとセキュリティの水準が高まるなか、信頼の重要性はますます増しています」と、市場調査会社Counterpointの主席アナリストであるアンシカ・ジェインは『WIRED』へのメールで説明する。「実際、プライバシーを最優先するアップルの姿勢は、同社にとって有利に働く可能性があります」

HomeViewには最大6つのiCloudアカウントを登録でき、グーグルの「Pixel Tablet」と同じように、ユーザーごとに画面の表示が切り替わる。例えば、妻の設定ではすべてのアプリアイコンは緑色で、ホーム画面にはウィジェットをひとつも配置していないかもしれない。それでも、あなたがHomeViewの前に立てば、あなたが設定した画面に切り替わるのである。

ほかの家族の重要なメッセージや個人情報を見ることはできない。また、HomeViewの前に立つだけでは、自分のメッセージや個人情報は表示されない。本人のiPhoneがHomeViewと同じWi-Fiネットワークに接続されており、なおかつ直近にロックを解除している必要がある。

HomeViewは声の識別にも対応している。例えば、父親がSiri AIに「音楽をかけて」と頼むと、ほかのiCloudユーザーのものではなく、父親自身の音楽ライブラリーから、普段使っている音楽アプリで曲を再生してくれる。また、HomePodやHomeViewを複数所有している場合は、HomeViewの画面からスピーカーのグループを管理できる。

HomeViewはアップルの「Handoff」機能にも対応している。iPhoneを近づけるだけで、Safariで開いているレシピをHomeViewに送ったり、通勤中に聴いていたポッドキャストの続きを再生したりできる。FaceTimeや電話で通話している最中でも、iPhoneをHomeViewに近づければ、HomeViewでそのまま通話を続けられるのだ。

Siri AIの実力が問われる

ほかのスマートディスプレイやスマートスピーカーと同様、HomeViewで重要な役割を果たしているのがSiri AIによるAI機能だ。何といっても、デバイスを操作する主な手段となるのがこの音声アシスタントなのである(もちろん、キーボードを表示して文字を入力することも可能だ)。アップルは今年、Siriの刷新に力を注ぎ、ついにiOS 27で機能を大幅に強化した新しいSiriを提供し始めた。

HomeViewのSiri AIは、iPhoneに保存されたユーザーの情報を参照し、ユーザーの予定や過去のやりとりなどを把握できる。例えば、友人のエリックが薦めてくれた曲を再生するよう頼めば、「メッセージ」アプリの履歴からどの曲かを特定して再生してくれるのだ。また、木曜日に兄弟のジェフが空港から自宅に何時ごろ到着するかを尋ね、その到着予想時刻の15分前にコーヒーメーカーの電源を入れるよう、Siriに指示することもできる。これらはすべて普段の会話と同じように話しかけるだけで指示できる。決まったコマンドを使う必要はない。

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Courtesy of Apple

HomeViewの便利な機能のひとつが、Safariで開いたレシピのページをわかりやすく整理して表示する機能だ。レシピを読み込むと、簡単に材料を確認したり、「調理開始」を選択したりできる。レシピの作成者がシチューにどれほど思い入れをもっているかを延々と綴った3段落もの文章を読む必要はない。レシピは手順ごとの説明に自動で変換され、必要な工程にはタイマーの時間も設定される。調理を進めながら、各工程に合わせて個別のタイマーを起動できるのだ。

当然ながら、HomeViewは家庭内のスマートホーム機器の操作にも対応している。「ホーム」アプリに登録した機器ごとにウィジェットを作成でき、HomeViewからすばやく操作できる仕様になっている。また、ホーム画面から左にスワイプすると「カメラ」の文字盤が表示され、接続された防犯カメラの映像をリアルタイムで確認できる。最大9台のカメラの映像を同時に表示することが可能だ。

発売を控える折り畳み式スマートフォン「iPhone Duo」と同様、アップルはこの市場でも後発組である。同社はiPhoneとの緊密な連携、ひと目で情報を確認できるApple Watchのようなソフトウェア、そしてユーザーの状況をより深く理解するSiriを武器に、HomeViewをキッチンカウンターに置きたくなるような製品にしようとしている。この製品の成否は、Siriが期待どおりに機能するかどうかにかかっている。そしてSiriはこれまでユーザーの期待に十分応えてきたとは言いがたい。

「より大きな課題は、日常的なやりとりのなかでAIをいかに役立つものに落とし込めるかです」とジェインは指摘する。「競合他社との差別化を図るには、アップルはSiriの機能をさらに強化し、自社のあらゆる製品をスムーズに操作できる環境を実現する必要があります」

(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)

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